手前勝手な画家の、人間活動として。

昨年の8月21日は、『春夢共鏡』の初回公演の初日だった。それからちょうど1年後、今は紺夜のタイ公演の為、現地視察にバンコクの小さなホテルでこの記事を書いている。

1年間、すっかり絵画制作そっちのけでこちらのブランディングに注力してきてしまった。「総合芸術活動」と自分の中で定義付けることでそれで良しとした。昨年は舞台プロデューサーと名乗り出たものの、一体何をこなすのが正解なのかわからないまま、気付いたらパフォーマンス集団という塊が常に生活に在った。

当初は年に舞台を2~3回ほど打つだけの事業計画であったプロジェクトが、気が付けば年中無休のパフォーマンス団体への道に舵を切り出し、名前もあっという間に「紺夜」とコンパクトとなり、やたらと走りやすくなってしまった。『春夢共鏡』は数あるコンテンツの1つとなった。

10年間、画家としてはギャラリーにも何ちゃらの会にも属さずにひたすら一人で自由気ままにやってきたのに、発作のように自ら起業して、いきなり団体の長になってしまった。しかし思い返せば、学生時代は気付いたら何かしらの代表で、委員長で、リーダーで、団長で、部長だった。そして全てに言えるのは、【1人 対 その他大勢】という肌感触だった。高校生活最後の体育祭、紅組団長だったが、私の号令で踊ったり動いたりする者たちが優勝したとて、私の青春の1ページにもならなかった。あの虚しさの正体を、私はずっとわからずにいた。

一人のクリエイティブが強い集団は、その他大勢が「駒」と化す。

それを身を以て体感してきたし、だからこそ、昨年『春夢共鏡』を0から創るのは私ではなく、私が頼んだ他者の感性だった。それは私にとってしまえば「遠回しな制作」で、100%小林舞香にならない為の色の調合だったと思う。誰かの基盤の上に、後からどんどん私の色を足す方が、互いに長く続けるにはきっとうまくいく方法だろうと思っている。

しかし、そんな手前勝手な調合により、昨年は特に演出家の阿比留大樹、振付の青井美文は大変だっただろうと察する。0からモノを作る時はエネルギーを心底消耗する。人に頼るのが苦手だから、頼る時も下手くそだ。私の0か100かみたいな味付けに、不味い思いをしながら今年も無事一緒にやってくれるのは奇跡に近い。

たった1年で感慨に耽るほど大きなことを成し遂げたわけでもなく、ただ確実に歩を進めていることを1年ごとに噛み締めるくらいはしたい。それが国内の本公演『春夢共鏡』である。少しずつ他人と融合しながら私の色を足していく。昨年よりは、アートを感じることが出来るはずだ。「ちょっと小林要素足すね〜」と言って、今年は昨年出来なかった部分をブラッシュアップする。

何もかもがまだ、目指している象への過程にある。様々な方面からの評価に対しては「あ、はい、解っています」とかわし、構える日々の中にいる。わかっている、だからどうにか飽き性の私でも辞めずにきている。「ここ」から見据えたら、ゴールは小さな点程遠い。

海外であろうとも実は「呼ばれて赴く」方が容易なのだ。難しいのは「ここにしか無い価値」を用意して周知させて、足を運んでもらうことの方が何倍も難しい。「待ってるから来て」という方がずっと大変だ。私は待つよりもすぐに駆け出してしまう性質だから、辛抱だ。「去年とはこんなに違うのか、じゃあ来年はもっと変わるだろう」と、ぜひ楽しみにしていただきたい。お待ちしております。

春夢共鏡 第三回公演 http://shuntomo.com/
チケット:https://shuntomo10.peatix.com/

春夢共鏡 第三回公演 10月8日(火) – 10月12日(日) 全9公演

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